インデンテーション試験
重要な材料パラメータ
微小硬さ試験機は、インデンテーション試験機とも呼ばれ、材料の硬さを測定します。材料試験で重要な要素である、押込み弾性率EIT、押込み硬さHIT および押込みクリープCITなどのような塑性や弾性の材料パラメータを試験できます。
ビッカースやマルテンス硬さなどのような従来の硬さ測定の他、ナノインデンテーションではいくつかの材料特有のパラメータを正確に測定ができます。微小硬さ試験機の主なアプリケーションは、塗装、メッキ、硬質材やポリマーなどの試験が対象となります。
ナノインデンテーションの仕組み。

インデンテーションテスターは、押込みの試験力と押込み深さを計測し、その曲線から微小硬さを求めます。指定された最大の力に達すると、圧子は再びリリースされ、押込み深さが記録されます。いろいろなパラメータは、押込みの試験力、圧子の形状と圧子の深さから計算されます。
ほとんどの材料において、圧痕試験は弾性成分と塑性成分を示します。試験片は、除荷後、圧痕の深さの初期値には戻りません。この図では、荷重曲線(青)と除荷曲線(オレンジ)が一致していないことが示されています。
重要なパラメータ
硬さと弾性は、重要な材料特性です。そのため、どのような試験を行ったかが大変重要となります。測定結果が標準的に比較できるようにするため、ISO 14577-1の規格に基づいて試験をすることが必要です。

押込み硬さ
押込み硬さHITは、資料の永久変形(=塑性)に対する抵抗を示す指標です。これは、荷重の戻り曲線からの接線を用いて決定され、最大試験荷重Fmaxに適用されます。押込み硬さHITはビッカース硬さHVに変換することができますが、この変換は明確に表示されなければなりません。
マルテンス硬度
押込み硬さHITとは対照的に、マルテンス硬さHMは塑性変形と弾性変形の材料特性に関して試験します。マルテンス硬さは、連続的に荷重を増加させ、その時の押込み深さから計算されます。
押込み弾性率
押込み弾性率EITは弾性値であり、弾性材料を使用するすべての用途において最も重要なパラメータです。弾性率EITは、圧痕の除荷曲線から計算されます。多くの場合、EIT値は古典的な弾性係数に匹敵しますが、それと同一視すべきではありません。
押込みクリープ
押込みクリープCITは、試験力を一定に保持した状態で材料試験を行います。一定の荷重を保持した状態で試験時間の経過により圧子の押込み深さから値を求めます。ポリマーなどの材料は、一定荷重に対して押込み深さが増大します。
貯蔵モジュラスと損失モジュラス
貯蔵率と損失率(E'とE'')は、材料の振動する応力下から求められます。貯蔵率は、弾性要素を表します;材料に貯蔵され、除荷されると取り戻すことができる変形エネルギーです。損失率は、粘性を表します;圧縮される間、熱に変わって失われるエネルギーです。
測定モード。
広範囲にわたるパラメータを測定することができるフィッシャーのインデンテーションテスターは、様々な測定モードを提供しています。
ESP法(Enhanced stiffness procedure)
ESP (Enhanced Stiffness Procedure) 法は、荷重を徐々に増やしたり減らしたりします。荷重は、予め定義した最大荷重まで力を加えます。これにより、押込み弾性率EIT、押込み硬さHIT、およびビッカース硬さ(HV)などのような深さおよび力依存のパラメータを試験できます。
この方法は、薄い層を試験する際に特に役に立ちます。深さ依存の測定値は、皮膜のパラメータは基板材による影響を受けずに測定できます。
ダイナミックモード
ダイナミックなモードは、動的機械分析(DMA)に基づきます。ダイナミックモードでは非常に小さなスケール(例えば自動車の塗装など)の材料の特性を測定します。このため、圧子はほんの数ナノメートルの振幅による荷重を正弦的に増やしてり減少させることで、表面に押し込みます。これは、例えば弾性率と貯蔵率と損失率の特性を測定します。
このプロセスはどこで使用されますか?
- 塗料、電気めっき、硬質材料、ポリマーの試験
測定に影響を与える要因は何ですか?
微小硬さ試験において、測定値に影響を及ぼす要素があります。圧子の劣化や温度の他、最も重要な要素として、測定時における振動と試料の表面粗さも重要です。
圧子の劣化について
試料から抵抗を受けるため、フィッシャーは圧子にダイヤモンドを使います。それでも、圧子は測定を繰り返すと劣化します。先端は丸みを帯び、形状も変わります。ある程度は、リファレンス材料(ホウケイ酸ガラスなど)上で測定をすることによって補うことができます。ただし、一度すり減って劣化し場合には、圧子は交換しなければなりません。
温度
温度は硬度と弾性の測定において重要な役割を果たします。多くの材料、特に柔らかいポリマーは、比較的小さな温度変動でもその特性が変化します。そのため、測定中に周囲温度を定義する必要があります。
さらに、測定技術自体も温度に反応します。特に数時間にわたって測定を行う場合、装置内で熱が発生することがあります。もしさまざまな部品が膨張すると、結果が歪む可能性があります。
天然の硬石で作られたプレートを使用した構造のおかげで、当社の装置は形状や温度において非常に安定しています。これにより、数時間にわたる温度非依存の測定が可能です。
振動
誤った測定値で最も一般的な要因は振動です。低い荷重試験で、空調システムの振動や周辺を歩く振動でさえ影響が出ます。非常にデリケートな試験のため、フィッシャーの除振台を設置することをおすすめします。
表面粗さ
粗い表面では、インデンターが試験部品と常に同じ接触面積を持つわけではありません。そのため、結果は再現性が低いことがよくあります。可能であれば、測定前に粗い表面を研磨するか、いくつかの比較測定を行うことが重要です。
ここで適用される基準は何ですか?
DIN EN ISO 14577-1 Annex AおよびASTM E 2546に準拠した材料特性の測定と計算